住宅ジャーナル2007年11月号
      
住宅の長寿命化(200年住宅)の推進
      来年度モデル事業等に国費108億円の要求申請 

 
      5月の発表以来、話題を巻き起こしている200年住宅ビジョン。
       国土交通省においては住宅の長寿命化(200年住宅)を推進するため
       108億円の予算要求など具体的に動き始めた。
 提言1 超長期住宅ガイドラインの策定(国民、住宅関連事業者、国、地方公共団体等が目指すべき200年住宅のイメージの共有)
 提言2 住宅履歴書の整備(新染時の設計図書や施工内容のみならず、リフォームや点検時の履歴を蓄積)
 提言3 分譲マンションの適切な維持管理のための新たな管理方式・権利設定方式の構築
(管理者管理方式・信託活用方式など)
 提言4 リフォーム支援体制の整備、長期修繕計画等の策定、リフォームローンの充実
 提言5 既存住宅の性能・品質に関する情報提供の充実(簡便で一定の客観性を確保した「既存住宅の評価ガイドライン」の策定など)
 提言6 既存住宅の取引に関する情報提供の充実(取引価格など)
 提言7 住替え・2地域居住の支援体制の整備、住替えを支援する住宅ローンの枠組み整備
 提言8 200年住宅(スケルトン・インフィル住宅)の建設・取得を支援する住宅ローン等の枠組み整備(超長期ローンと中期ローンの組み合わせ、期間所有権的な仕組みを活用した公的主体による200年住宅の整備・供給など)
 提言9 200年住宅の資産価値を活用した新たなローンが提供される仕組みの構築(高齢者が住宅を担保として生活資金等の融資を受け、死亡時に住宅を処分して一括返済するリバース・モーゲージなど)
 提言10 200年住宅に係る税負担の軽減(既存住宅の取引に係る消費税の取扱い、200年住宅への政策誘導手段としての住宅税制のあり方の検討など)
 提言11 200年住宅の実現・普及に向けた先導的モデル事業の実施
 提言12 良好なまちなみの形成・維持(地区計画制度活用促進、住宅地のマネジメント活動の担い手育成など)

200年住宅ビジョンとは何か?
 「200年住宅ビジョン」は、自民党の政務調査会の土地住宅調査会(会長 福田康夫(当時))が5月にまとめたもの。これを受けて現在、国土交通省では具体的な予算要求、税制要求を行っている。
 「200年住宅ビジョン」 の元になっているのは、住生活基本法である。200年住宅というのはロングライフの象徴で、200年という年数自体に意味はない。ただし、200年後ということは孫のひ孫の世代になるので、自分の子孫が住めるようにというよりは、いいものを作ってきちんと管理していくことで資産としての価値を維持・向上させ資産の流動化を行うことが大切となる。
 我が国の住宅が30年程度で取り壊されている無駄使いをやめ、また、少子高齢化の進展による福祉負担の増大や環境問題の深刻さなどから、より長く大事に使っていくことが求められている。

住宅履歴書の作成とマンションの新管理方式
 「200年住宅ビジョン」では、12の提言が打ち出された。大きく分けると、建設、維持管理、流通、金融等の各段階で住宅の長寿命化を推進していこうというむじのであり、主なものは図表のとおり。
 12の提言のうち、第一番目の「超長期住宅ガイドライン」 は、今後の住宅はこのようになっていくのだということを国民に示そうというもので、今年度中に策定される予定である。
 二番目は「住宅履歴書」の整備である。まず建築時に住宅の管理をセットとして考えることが必要である。配管などは必ず取り替えるので、初めからメンテナンスや更新を行うことを前提に計画することが必要となる。例えば、カルテや車検証のようなものを整備して、いつどのような工事を行ったか、災害のときはどうだったかなどのデータを記録し、また活用していくことが必要である。
 履歴書をつくる上で必要なのは、業者の人だけではなく、利用者も理解できる分かりやすいものでなければならないことである。したがって、将来に
わたって共通の理解が得られるような何らかの共通言語が必要であり、社会的システムとして履歴情報の蓄積・活用に関わる仕組み・ルールを構築していく必要がある。「これは俺が建てた家だから俺のところで面倒を見る」と言って大工が代々修理していたホームドクターとしての役割を、現代的なシステムで活性化させることとも言える。
 三番目が分譲マンションの適切な管理方式である。区分所有方式の場合、修繕や設備更新などにあたって区分所有者問の合意形成が困難であり、適切な維持管理が行われないおそれがある。
 そこで「管理者管理方式」 といって組合ではなくてプロの管理者に任せたり、「信託活用方式」といってマンションそのものを信託にして、その信託受益権として管理者が入居することなどが考えられる。
 四番目はリフォーム支援体制の整備である。近年、悪質リフォームの問題が発覚したが、専門業としてきちっと管理できる業者がいなければ200年住宅は成り立たない。
 中古住宅の流れを阻害する要因は二つあって、一つは「モノが分からない」。つまり変なものをつかまされるのではないかということ、もう一つは「値段が分からない」。つまり高いものをつかまされているんじゃないか、あるいは安く買いたたかれているんじゃないかということで、例えば中古車のように相場を適正につかめるようにすることが理想である。
 また住宅ローンの新しい枠組みも検討中である。住宅の価格はライフサイクルコストで考えると安くなるだろうが、イニシャルコストは高くなる。問題はイニシャルコストの負担をどうするのかということである。
 スケルトンインフィルのスケルトンが200年持つことを仮定すれば、インフィル部分は数十年持つのでインフィルとスケルトンなどに分けるローンの仕組みなど新しい枠組も検討されていく。
 最後に税の問題であるが、よい取り組みを行ったことによるイニシャルコストの増加に伴う税負担の増加が推進を阻害することのないよう減税措置についても要望されている。

モデル事業で100億円の予算要求
 現在、国土交通省では、来年度のためにモデル事業の創設として100億円の予算要求を行っている。がっちりつくるためのスケルトンの工夫や履歴情報などの維持管理に関する取組等を先導的なモデルとして支援しようとするものである。今年度中にガイドラインをつくって200年住宅とはこういうものだということを国民に示すとともに、モデル事業の実施により、体験等を通じてより理解を深めていくことを狙っているものである。
 その他、住宅履歴情報の整備、NPO等への支援、住み替えの促進などについて所要の予算を要求しているところである。
 なお、これらは、財政当局への要求段階であり、12月末の政府予算原案に向けて予算的にも内容的にも代わっていくことはありうるとのことである。

今後の建材に求められる性能とは
 住宅の長寿命化のためには建築資材の長期にわたる耐用年数も求められる。具体的な検討は今後の課題であるが、基本的には構成部品群を古いものと交換できるルールが必要となる。奇抜な型式をつくつて、互換性のないものにならないように注意する必要がある。
 断熱サッシの窓枠が従来型のサッシに入らないことなどがその一例であるが、200年住宅というビジョンが浸透すれば、交換性の市場ニーズに基づいて、業界での対応がなされていくものと期待される。また、その一方で型式が違ってもリフォームできる高度な技術も必要となる。
 今、住宅政策は大きな転換点にいる。国民生活そのものが変わる大転換点である。福田首相も語るように、200年ビジョンとは何も住宅政策のことだけを言っているのではない。住宅は浪費するものではなくストックとして貯蓄していく。その分だけ、国民生活を豊かなものにしていくことに意義があると言えよう。つまり、住生活基本法という大枠で示されたものに、さらに具体的なビジョンが見えてきた。今後は、いいものをきちっと作ってストック型、サステナブル型として、技術的・制度的にもしっかり管理、流通させていくことが一層重要となるであろう。






 住宅情報局は住宅建材のオピニオンをリードする日本建材新聞社のオフィシャルサイトです

 住宅ジャーナル               木工機械グラフ          日本木工新聞
HOME 会社概要 沿革 採用情報 お問合せ